イールドギャップとは?騙されないために知るべき正しい解釈

イールドギャップ

 

不動産投資の収益性について調べていると、どこかで出くわすであろう「イールドギャップ」という用語。

不動産投資の情報収集を始めたばかりの人の中には、イールドギャップの意味や使い方を知らない人も多いです。

そこで今回は、不動産投資の初心者向けに、イールドギャップの基礎的な知識や役立て方を、分かりやすく説明しました。

イールドギャップとは「投資利回り」と「長期金利」の差のこと

差

イールドギャップ(Yield gap)とは、「投資利回り」から「長期金利」を引いたときにあらわれる“差”のことを指します。

 

【簡単なイールドギャップの算出方式】

投資利回り - 長期金利 = イールドギャップ(%)

《例》5% -  3%   = 2%

算出されたイールドギャップの数値は、投資判断をするうえでの基準の1つ。投資用不動産を選ぶときにも参考にされます。

イールドギャップについて理解しておくと、単に“投資利回りが高い不動産=利益の出やすい不動産”というわけでなく、同時によい条件で融資を受けることが利益のカギになることが、おのずと分かるでしょう。

 

イールドギャップが重要視されているのは、不動産のような大きな投資は「レバレッジ投資(=融資を受けて行う投資)」が前提で進められることが多いからだと思われます。

「レバレッジ」についての説明がほしい人は、下記コラムを併せてご覧ください。

レバレッジ効果とは?少ない自己資金で不動産投資を始めよう

イールドギャップの計算に使う投資利回りは「実質利回り」

イールドギャップの算出について、1つ間違えやすいポイントがあります。

イールドギャップの算出に使う「投資利回り」は、「表面利回り」ではなく「実質利回り」でなくてはいけません。

 

基本的に、“不動産投資の「表面利回り」は「実質利回り」よりも数%高い数値”となります。

つまり、間違えて「表面利回り」からの算出をすると、イールドギャップの数値も実際より数%(表面利回りと実質利回りの差分)高く算出されてしまい、実際はそうでもないのに儲かるように思えたり、余裕があるように思えたりして、現実的な判断を誤ることがあるのです。

 

悪徳セールス

悪徳な不動産の営業マンのなかには、イールドギャップという言葉は知っているけど内容を正しく知らない初心者を相手どり、物件の「表面利回り」から「長期金利」を引いてみせて、“こんなにも利益が出る!”と推してくる人がいます。

 

そもそもイールドギャップの大きさだけで、投資用不動産にふさわしい物件かどうかを判断することはできないので、“イールドギャップありき”で営業をしてくる人の話は、決して真に受けないことです。

のってはいけない!怪しい不動産投資のセールストーク

厳密には「長期金利」に”返済期間”を反映して計算する

先ほど紹介したイールドギャップの出し方の「投資利回り(実質利回り) - 長期金利」は、実は1番シンプル・簡単に値を出す方法。

イールドギャップ自体がいわゆる“机上の空論”なので限度はありますが、もう少し厳密に値を出す方法もあります。

 

同じ融資額でも10年ローンなのか20年ローンなのか、それとも30年ローンなのか、ローン返済期間の違いによって毎年の支払い額は異なります。

それを考慮して、「長期金利」をそのままの値で差し引くのではなく、“返済期間”の概念を反映させた数値で差し引くと、より現実的なイールドギャップの値が確認できるのです。

 

この算出をする際に使われるのが、借入金額に対する年間返済金額の比率、通称「K%」と呼ばれる値です。

【より厳密なイールドギャップの算出方式】

① 年間支払額 (利息+元本) ÷ 借入金額 = K%

② 実質利回り - K (①で出た値) = イールドギャップ(%)

投資に向いたイールドギャップの目安値・標準値はある?

目安値

“理論上”は「イールドギャップが大きいほど利益が出やすい」のですが、“実際”はそれ以外の要素も並行して不動産投資の収益性に絡んでくるため、絶対的な目安値・標準値というものは断定できません

イールドギャップの理想値については、専門家によっても意見が分かれてくるところでしょう。

 

メジャーな見解としては、「少なくともイールドギャップがマイナスになる物件は避けるべき」、また「現実的に目指すべき値は1.5~2%くらい」などとあります。

イールドギャップの変化は、不動産投資のやり方の変化にも大きく影響している

不動産投資 イメージ

ここで、イールドギャップに関する豆知識。

1990年代初頭のバブル期から現在にかけて、“不動産投資のやり方”がガラッと変わったことはご存知でしょうか?

 

バブル期の不動産投資は、売却益(キャピタルゲイン)を狙うやり方が主流でした。しかしそのやり方はバブル崩壊とともに廃れ、今は家賃収入(インカムゲイン)を狙うやり方が主流です。

この変化には、イールドギャップの変化が大きく影響しています。

 

バブル期、不動産価格は高騰していました。しかし、その高騰に見合うほど賃料を上げることはできません。つまり、家賃収入は期待できない時代だったというわけです。

利回りが低く借入金利が高い状況は、イールドギャップのマイナスを生んだため、バブル期の不動産投資は「富裕層が現金で不動産を買って売却して利益を得る」、つまりキャピタルゲイン狙いが定石でした。

 

しかしバブル崩壊後は、不動産価格が暴落。売却益に期待することはできなくなりました。

借入金利も下落しましたが、賃料(オーナーにとっては家賃収入)までが劇的に安くなったわけではありません。

 

そして、不動産価格の暴落が起きても賃料には大きく影響しない状況が、イールドギャップのプラスを生み「融資を受けて不動産を買って、入居者からの家賃で利益を得る」、インカムゲイン狙いの不動産投資が確立したのです。

まとめ

メリット

以上、「イールドギャップとは何? 不動産投資にどう関係する?」という疑問を持たれている、不動産投資初心者向けの解説でした。

記事の中でも述べたように、イールドギャップはあくまでも投資判断における“材料の1つ”です。

 

仮に投資用不動産を選ぶのであれば、イールドギャップだけを見て選ぶのではなく、

  • 物件の立地 (※最寄り駅からのアクセスなど)
  • 周辺環境
  • 建物の構造
  • 築年数
  • 設備の使用

こうした様々な要素も一緒に見て、選ぶ必要があります。

 

不動産投資の勉強を始めたばかりの人は、物件選びで大切なことの情報収集がまだまだ必要かもしれません。

今回の「イールドギャップ」のように、まったくピンとこない言葉も、探せば出てくるでしょう。

 

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