「財形貯蓄」を分かりやすく解説 | メリット・デメリット・始め方
「財形貯蓄(ざいけいちょちく)」って耳にしたことはあるけれど、詳しい内容や誰が対象の制度かはわからない……そんなことはありませんか?
財形貯蓄という制度を活用すれば、貯金が苦手な人でも無理なく住宅資金を貯めたり、老後資金を作れたりできます。
「そうなんだ、財形貯蓄について分かりやすく知りたい!」という人のために、今回は以下の内容をお伝えしていきます。
目次
財形貯蓄とは? |3つの種類
財形貯蓄とは、分かりやすく言うと「勤務先が給料から一定の額を天引きして、自分の代わりに貯金をしてくれるシステム」のことを指します。
要するに申請さえすれば、“給料をもらう時には先に貯金ができている状態”になるため、自分で貯金をすることが苦手な人にとっては都合がよいのです。
その他にも、財形貯蓄ならではの利点がいくつかあります。後の段落で分かりやすく解説しましょう。
まずは、知っておくべき財形貯蓄の種類とその違いについて説明します。
財形貯蓄の種類は、目的別に3種類あります。
1.多目的の「一般財形貯蓄」
多目的で利用できるのが、「一般財形貯蓄」です。「何に使用するかわからないけど、将来のために貯金したい」という人にオススメです。
メリットは、使用目的が自由であることと、貯蓄開始から1年が経てば自由に引き出せることです。
いっぽうデメリットは、税金面の優遇がない(利子に約20%の課税がかかる)ことです。
利用できる人 | 勤労者 (労働者・公務員・船員など) |
---|---|
貯蓄の使い道 | 貯蓄目的の制限はなく、自由 |
積み立て期間 | 原則3年以上の期間、定期的に積み立てる |
貯蓄商品 | 預貯金、合同運用信託、有価証券、 生命保険、生命共済、損害保険 など |
2.家を買う目的の「財形住宅貯蓄」
家の購入・建設・リフォームに使えるのが「財形住宅貯蓄」で、「将来、家を購入する予定」という人にオススメです。
メリットには、税金面の優遇(550万円までの貯蓄は利子が非課税)があることと、住宅なら新築でも中古でもOKなことが挙げられます。
いっぽうデメリットには、住宅以外の目的で使用すると、過去5年分の利子が課税対象になることが挙げられます。
利用できる人 | 満55歳未満の勤労者で、 他に財形住宅貯蓄をしていない人 (一般財形貯蓄・財形年金貯蓄と併用可) |
---|---|
貯蓄の使い道 | 住宅の建設、住宅の購入、 工事費が75万円を超えるリフォームなど |
積み立て期間 | 5年以上 |
貯蓄商品 | 預貯金、合同運用信託、有価証券、 生命保険、生命共済、損害保険 など |
3.老後資金目的の「財形年金貯蓄」
老後資金(年金の足し)として使えるのが、「財形年金貯蓄」です。通常公的年金は65歳から受給できますが、財形年金貯蓄で貯めた資金は60歳から引き出せます。
「国の年金だけでは、将来が不安だ」という人にオススメです。
メリットは、税金面の優遇(550万円までの貯蓄は利子が非課税)があることと、「公的年金」にプラスで貯蓄できることです。
デメリットは、老後資金以外の目的で使用すると、過去5年分の利子が課税対象になること
です。
利用できる人 | 満55歳未満の勤労者で、 他に財形年金貯蓄をしていない人 (一般財形貯蓄・財形住宅貯蓄と併用可) |
---|---|
受け取り期間 | 満60歳以降に5年以上20年以内 (保険商品の場合、終身受け取りも可能) |
貯蓄の使い道 | 老後に向けた資金 |
積み立て期間 | 5年以上 |
貯蓄商品 | 預貯金、合同運用信託、有価証券、 生命保険、生命共済、 郵便年金、損害保険 など |
財形貯蓄とはどんな人におすすめなの?
ここまで読んで「結局、自分は財形貯蓄をすべきなの?」という疑問を持たれた方もいらっしゃるでしょう。
そこで、「財形貯蓄はこんな人にオススメ」というタイプをまとめました。
ただし、財形貯蓄のメリットと同様の効果のある運用方法は他にあるため、「お金を増やす」という点においてメリットが少ない財形貯蓄は、資産運用の方法としてはおすすめできません。
「お金を増やしたい」と考えるのであれば、以下の運用方法をチェックしてください。
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その① 自分で貯金するのが苦手な人
まず「貯金が苦手だ」「過去に貯金で成功したことがない」という人に、財形貯蓄はオススメです。
貯金ができない理由に「給料から天引きして貯金しない」「つい給与分だけ使い切ってしまう」などが考えられるでしょう。
財形貯蓄であれば、給与に手をつける前に自動で貯金されるので「自己管理が苦手」な人には有効な手段なのです。
その②「住宅購入のために貯めたい」という人
次は「将来的に住宅を購入・建築・リフォームしたい」という方にもオススメです。
先述したとおり財形貯蓄をすれば、財形貯蓄額の10倍(最高4,000万円)まで「住宅ローンの融資」を受けることができます。
このとき受け取れる「住宅ローンの融資」は民間のローンより低い金利で月々の返済が可能なので、住宅を購入したい人にとって
- 物件の頭金は「財形住宅貯蓄」で支払い
- 毎月のローンは「住宅ローンの融資」で返済
という組み合わせは、とても賢い方法と言えるでしょう。
その③ 将来に「安心感」がほしい人
将来に漠然とした不安があり「とにかく若いうちから貯蓄をしたい」という方にも、財形貯蓄は非常にオススメです。
用途がとくに決まっていないのであれば、多目的でお金を使える「一般財形貯蓄」が良いでしょう。
仮に毎月3万円、ボーナス月に15万円を5年貯蓄するなら、以下のようなシミュレーションとなります。
3万円×10ヶ月+15万円×2ヶ月=60万円
60万円×5年間=300万円
合計額:300万円
このように財形貯蓄を活用すれば、自動的に5年で300万円の貯蓄が可能になります。
将来を安心して迎えたい人は、ぜひ財形貯蓄を検討してはいかがでしょうか。
財形貯蓄の3つのメリット
1.絶対に貯金できる
先にも述べたように財形貯蓄は、給料から一定の額を、企業が先に銀行へ預け入れてくれます。
つまり、給料に手をつける前に貯金を済ませてくれるので、「貯金したいのに、気づいたら今月の給料がスッカラカン……」なんてことが起こりません。
「貯金に苦手意識がある」という人には、ぴったりなのです。
2.貯金の利息に税金がかからない
銀行に自分でお金を預けていると、ついた利息のうち20.315%は税金として取られてしまいます。
仮にあなたの貯蓄についた利息が「1,000円」だったと仮定した場合。
- 税金は、1,000円×20.315%=203円
- 手元に残るお金は、1,000円-203円=797円
といった具合に、1,000円分の利息がついたのに手元に残るのは797円まで減ってしまうのです。
しかし、「財形住宅貯蓄」と「財形年金貯蓄」で貯金をすれば、合計貯蓄残高が550万円までは利息に税金がかかりません。
貯金の目的を明確にしなくてはいけないものの、無駄なくお金が貯められるのです。
※一般財形貯蓄は、非課税の対象外です。
3.住宅ローンの融資を受けられる
財形貯蓄をすることで、住宅ローンの融資が受けられるというメリットもあります。
融資の条件は、以下の2つです。
- 財形貯蓄を1年以上継続
- 貯蓄残高が50万円以上
これらに該当すれば、貯蓄残高の10倍まで融資を受けることが可能です。
財形貯蓄の3つのデメリット
1.利子にはあまり期待できない
財形貯蓄の金利は0.01%前後です(金利の詳細については、勤務先の担当部署に確認する必要があります)。
つまり「500万を1年間貯蓄しても、500円しかプラスで貰えない」という計算です。
「利子がついて預けた金額より大きくなるかも……」とは、期待しないほうがよさそうです。
とはいえ、一般的な銀行預金の他の金利は、以下の通り。
- ゆうちょ銀行の定期預金(0.002%)
- みずほ銀行の定期預金(0.002%)
- 三菱UFJ銀行のスーパー定期(0.002%)
財形貯蓄の金利は、普通の銀行預金より若干であるものの、お得です。
2.お金の引き出しに時間がかかる
財形貯蓄のお金を引き出す場合、勤務先および金融機関に申請手続きが必要です。
通常の預金のように「いつでもATMから引き出す」ということはできないので、すぐにまとまったお金が必要という状況には対応できません。
3.転職時、転職した会社に制度がないと継続できない
財形貯蓄は、勤務先が制度を取り入れていなければ、そもそも利用することができません。
よって、以前の会社で財形貯蓄をしていたとしても、転職先が制度を扱っていなければ継続不可能となり、解約して貯蓄を引き出すこととなります。
一方で、転職先の会社が財形貯蓄を取り扱っていれば、転職先でも貯蓄額はそのままで続けることができます。
転職先の担当者に確認を取り、速やかに手続きを行いましょう。
財形貯蓄の3つの疑問
財形貯蓄を利用したことがないと、どのように引き出せばいいのかなどイメージがしにくいと思います。そこで、財形貯蓄によくある疑問を解説していきます
1. 転職した場合は財形貯蓄はどうなる?
財形貯蓄は、転職先に制度があるかどうかで対応が変わります。
もしも、転職先に財形貯蓄の制度がある場合は、積み立ててきた財形貯蓄を新しい職場の財形貯蓄に移換することが可能です。
退職から2年以内はそのまま金融機関に保管をしておけるため、2年以内に手続きを行えば積み立てが再開できます。
転職先に財形貯蓄の制度がない場合は、財形貯蓄は解約となり払い出しをする必要があります。
この時、住宅取得以外の目的の払い出しとみなされるため、利子に対して過去5年分課税が行われるので注意しましょう。
2.途中で財形貯蓄の種類は変更できる?
財形貯蓄には前述した通り3通りの用途があります。
例えば、今まで普通の財形貯蓄をしていたけれど、財形年金貯蓄に変更したいと考える人もいるかもしれませんが、途中で他の種類の財形貯蓄に変更はできません。
しかし、財形貯蓄は複数加入できるため、元の財形貯蓄と並行して他の財形貯蓄に加入することはできます。
3. どうやって引き出すの?
基本的には財形貯蓄を引き出す場合、会社に必要な書類を提出して引き出しを行います。
金融機関によってはWebなどから引き出しの申し込みができることもあるので、会社の担当者に確認をしておくか、金融機関に問い合わせをしておくといいでしょう。
財形貯蓄は積み立てるのが目的であるため、引き出しには時間がかかります。
金融機関に書類が提出されてから3〜5日かかるため、会社に書類を提出する場合はさらに日数がかかることもあるでしょう。
また、金融機関の休業日を挟むとその分入金が遅れることも覚えておきましょう。
ゴールデンウィークや年末年始などは特に注意が必要ですよ。
財形貯蓄の始め方
財形貯蓄を始めるには、まず職場の人事や福利厚生の担当者に、「財形貯蓄を始めたい」という旨を申し出ます。
必要書類が交付されるので、必要事項を書いて提出します。特に問題がなければ、給与やボーナスからの天引きが始まります。
財形貯蓄の商品(定期預金・国債・社債・保険など)は、会社が用意したもののなかから、選ぶことができます。
財形貯蓄の内容変更・解約も、人事部・福利厚生部の手続きを経ます。
財形貯蓄よりおすすめできる低リスク投資とは?
基本的に「住宅ローンの負担を極限まで減らしたい」という方以外には財形貯蓄はあまりおすすめしません。
前述した通り、財形貯蓄の金利は0.01%です。毎月20,000円を財形貯蓄で10年貯めた場合、利息分は924円しか増えません。貯金の利息に税金がかからないメリットがあるため、資産形成という観点では預金よりは有効ですが、利回りは低いです。
自動的に貯蓄ができる、積立型の資産運用はほかにもあります。
現在財形貯蓄をやるか迷っている方は、これらの選択肢も理解した上で選択しましょう。
1.不動産投資
不動産投資はお金持ちしかできないと考えている人も多いですが、実際はそうではありません。マンションの一室を管理する区分マンション投資の場合、初期費用は10〜100万円で始められます。
物件価格の大半は金融機関という他人資本の力を借りるためです。ローン返済額の大部分は入居者の家賃からまかなえます。金融機関から借りたお金を、実質的には入居者が返しているという構造になるのです、
ただ、空室が出るとローン返済額を自己資金から持ち出さなければならなくなるため、一室のみの管理の場合は家賃保証をつけましょう。ローン完済までは月1〜2万円の積立が必要になりますが、ローン完済後は安定した不労所得が受け取れます。
たとえば、30歳から始めて35年ローンを組んだ場合、65歳からは毎月8万円程度(家賃による)の不労所得を得られます。月1〜2万円の積立を負担に感じるかもしれませんが、不動産投資には生命保険としての効果があります。
ローンを組む際に、債務者が死亡したり、高度障害を負ったりした際に残債がゼロになる団体信用生命保険に加入するためです。ローンの返済が必要ない状態で配偶者や子どもに相続できるため、「物件の価値+今後生み出せる家賃収益」という資産が残せます。
知らないことで選択肢から除外しておくのはもったいない投資ですので、セミナーに行ったり、本を読んだりしてから判断してみましょう。
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2.積立投信(つみたてNISA利用)
積立投信とは、投資信託を定期的に購入する積立投資です。投資初心者の場合、つみたてNISAという制度を利用して始めてみましょう。
つみたてNISAは少額からの長期・積み立て・分散投資を支援するための非課税制度です。投資から得られる分配金や譲渡益が非課税になるメリットがあります。
条件があるので、以下の範囲でやれる範囲で活用しましょう。
- 非課税となる投資枠は毎年40万円まで
- 売却益は購入時から数えて20年間非課税
- 非課税で保有できる資産総額は800万円まで
投資対象商品は金融庁が指定する投資信託のみで、投資対象が限定されるという点のみ注意をしましょう。
つみたてNISAを試してみて、それ以上に投資を行いたい場合は利益に課税はされますが一般的な投資信託を始めてみてください。
3.株式累積投資
株式累積投資とは、毎月一定額の株式を買い増す投資方法で、「るいとう」とも言われています。るいとうは少額から投資が可能で、複数銘柄に分散投資することで、価格変動によるリスクも抑えることが可能です。
投資信託との違いは、自分で購入する銘柄を選べるという点です。
投資する銘柄は自分自身で決めたいという人は積立投信ではなく、るいとうをおすすめします。
4.iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoは「個人型拠出年金」のことで、自分で拠出したお金を60歳以降に受け取ることができる私的年金です。
つまり、財形貯蓄の中の「財形年金貯蓄」のようなものですが、財形年金貯蓄との違いは、運用益があるためiDeCoの方がお金が貯まるという点です。
iDeCoの運用益は非課税となるだけでなく、毎月の掛け金を年末調整や確定申告で申告すれば、所得控除を受けられます。
ただしiDeCoの場合、60歳になるまで拠出・運用したお金が引き出せません。
急な出費などでお金が必要になっても、iDeCoで積み立てている分は使用できないということは覚えておきましょう。
【まとめ】財形貯蓄は「手堅く貯金したい人」の強い味方
「財形貯蓄」は将来に向けて「確実にお金を貯めたい」という人の、強い味方となる制度です。
【今回のポイント】
- 財形貯蓄は「給料天引きで貯金してくれる」制度
- 財形貯蓄には目的別に3つの種類がある
- 何かしら「組織」に「雇われている」人しか使えない
- 貯金が苦手な人の心強い味方
- 大きなリターンはないが、着実な貯金ができる
- メリットとデメリットがあるので、理解して利用するのが重要
皆さんも自分の性格や将来のビジョンと照らし合わせて、財形貯蓄の活用を検討してみてください。
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