生産緑地の地価下落「2022年問題」まであと1年!本当に下落する?
「生産緑地の2022年問題」ってご存知でしょうか?
生産緑地とは、「農業の継続と条件に、固定資産税や相続税などの税務上のメリットが得られる」都市型農地のことです。
2022年に東京・大阪・名古屋など大都市圏で生産緑地が一気に解除され、「宅地」にしないといけない土地が飽和し、都市部の宅地・マンション・アパートが増え、不動産価格が下落するのではないか?といわれています。
2022年に生産緑地の指定が終わるものは生産緑地の8割にあたる10,500ha(東京ドーム2,244個分)と言われています。
そのような状況で、マンション・アパート・駐車場経営を始めるべきなのかお悩みの方も多いのではないでしょうか。
現在生産緑地の2022年問題に関しては、いろいろな見方が世の中にあふれてきました。一体、どの情報を信じて不動産投資をしていけば良いのでしょうか?
この記事では「生産緑地」や「生産緑地法」、「2022年問題」などについて解説し、生産緑地の2022年問題と宅地飽和の関係について考察していきたいと思います。
目次
「生産緑地」とはいったい何なのか?メリット・デメリットを整理
生産緑地とは、東京・大阪などの都市部の「市街化区域」の中にある一定の条件を満たした農地で、宅地への転用を防止し保全する目的で指定される農地です。
都市化が進む大都市近郊地域において、良好な自然環境とのバランスをとるための立法趣旨で、1992年に「生産緑地法」が制定されました。
その結果、急激な都市化を抑制しながらバランス良く都市発展をされる目的はある程度達成されました。
「生産緑地」の定義は?
「生産緑地」の定義は、生産緑地法第3条第1項の規定で、以下のように決められています。
1. 公害又は災害の防止、農林漁業と調和した都市環境の保全等
良好な生活環境の確保に相当の効用があり、かつ、
公共施設等の敷地の用に供する土地として適しているものであること。
2. 500平方メートル以上の規模の区域であること。
3. 用排水その他の状況を勘案して
農林漁業の継続が可能な条件を備えていると認められるものであること。
(※生産緑地法 第2条、第3条第1項より引用)
つまり、「ある程度の広さ」の土地で農業に使用できるものが、「生産緑地」の条件として浮かんできます。
生産緑地のメリット
生産緑地のメリットは主に以下の2つです。
- 固定資産税の軽減(宅地の数百分の1程度)・・農地としての課税なので、宅地の税額よりも大幅に安い
- 相続税の納税猶予を受けることができる
つまり、「固定資産税・相続税の負担の大幅な軽減」です。
生産緑地のデメリット
生産緑地のデメリットは主に以下の3つです。
- 土地活用や相続対策が難しい・・生産緑地の指定が解除されるまでは宅地転用はできないため
- ほぼ全ての相続税を猶予してもらうには終身営農が条件
- 一度生産緑地に指定されると、解除されるまで農地以外の地目では活用できない
つまり、「一度生産緑地に指定されると、農地以外の使い方をすることができない」ということです。
「生産緑地の30年縛り」が2022年問題を発生させている
生産緑地は必ず農地として管理する必要があります。生産緑地を解除するためには、生産緑地として公示されてから30年経過するのを待ち、市町村に対して生産緑地の買取申出を行うことができるようになります。
この「30年縛り」が「2022年問題」を発生させる要因です。
1992年の法律施行時に生産緑地に指定された農地が、30年を経過して解除されるのが2022年で、多くの生産緑地が一般的な農地と同じ扱いになるため、農地転用を経て都市部に宅地を増やし、土地価格の低下を進めてしまう可能性が生まれるタイミングになります。
何故、農地が宅地化される見通しなのか?2つの理由を解説
生産緑地が解除されても、一般的な農地としてそのまま農業を続けることができるのに、何故、宅地が増えることが予想されるのでしょうか?
理由1.農業ができる人がいなくなるから
というのも、農家の高齢化、小作人の高齢化、跡取りがいないことで、生産緑地を相続しても農業に関するノウハウがない世代が増えて、農業を続けることが出来なくなってしまうので、生産緑地を解除し、宅地に農地転用をするしかない状況になります。
宅地にしてしまうと、良い立地の宅地はわりと簡単に売ることができますが、立地に難がある土地はなかなか売ることができません。
その中で農地の何百倍もの固定資産税を支払うためには、自ら居住する以外には「マンション・アパート・駐車場」を作って収益をあげていくしかありません。
理由2.市街化区域の農地は、農地のままにしていても宅地並みの固定資産税になるから
市街化区域は、「積極的に都市化をしていこうよ」という区域です。
1968年に制定された都市計画法では都市化を目指して市街化区域を設定したのですが、なかなか農地転用が進まなかったことから、1971年に市街化区域内の農地に対し「宅地並みの固定資産税」を課すようになりました。
生産緑地はすべからく市街化区域内にあります。結局、農地で持っていても宅地で持っていても課税額はほぼ同じになるので、資産形成のしやすい「宅地」にどんどん変えていく、というメカニズムが発生し、2022年に市街化区域内に宅地が増える、と言われています。
今後「生産緑地あがりの宅地」はどのように増えていくと予想できるか?
それでは実際、生産緑地を解除して、宅地化するケースはどれだけ増えるのでしょうか?
ここに来て、「以前予想していたほど爆発的に宅地が増えるということはない」という見方が出てきています。
それは、どのような理由からでしょうか?
2017年の「生産緑地法の一部改正」で農家の選択肢が広がり、宅地化が抑制か
2017年に生産緑地法の一部が改正されました。その結果、主に下記の4点の変更が行われました。
- 特定生産緑地指定制度の創設・・生産緑地指定の解除の30年期限を10年先送りにできる
- 指定面積要件の緩和・・生産緑地の指定の面積要件が500㎡以上から300㎡以上に
- 行為制限の緩和・・生産緑地には営業施設は建てられなかったが、直売所や農家レストラン等の設置が可能に
- 生産緑地の貸借円滑化・・生産緑地のオーナー農家以外の農業従事者にも農地が貸せるようになる
この法制度改正により、
現在、
- 相続税の猶予を受けている
- 農業を継続したい
- 農業の後継者がいる
場合には、「特定生産緑地指定制度」で特定生産緑地に指定して解除を10年先送りにするでしょう。
また、
- 生産緑地の貸付
を利用し、農業法人が生産緑地を借り、若手の新規農業者に農地を斡旋したり、都市農園として一般の家庭に区画で貸すなどの農業法人の新しいビジネスモデルも現在出てきております。
こちらのビジネスをする生産緑地オーナーも、特定生産緑地に指定して解除を10年先送りにするでしょう。
つまり、「相続税の猶予を受けている」「農業を継続したい」「農業の後継者がいる」「生産緑地の貸付」を考えている生産緑地オーナーは生産緑地を継続するので、宅地転用をすることはなく、「生産緑地法改正以前に想定されたほど爆発的に宅地は増えないのではないか」という見方が主流になってきています。
(参考記事)2022年問題の不動産市場への影響-生産緑地の宅地化で、地価は暴落しない:ニッセイ基礎研究所
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=59009&pno=3?site=nli
まとめ:全体的には爆発的な宅地の供給増は避けられるが、地域の動向に注意
以上のように、生産緑地法の改正・新たな農業ビジネスモデルの発生によって、以前懸念されていたような「2022年に、生産緑地のほとんどが解除されて宅地が爆発的に増加する」状況は緩和された、といえます。
ただ、上述してきた内容はあくまでも「全体市場」の話です。実際に不動産投資を計画するときには、「個別の地域の状況」を綿密に調査しなければいけません。
例えば、自分がマンション・アパート投資をしようと計画している場所の「周辺の生産緑地の農家が全て2022年で生産緑地の指定を終え、その全てを宅地化してしまったら」、その地域の宅地の需給バランス→マンション・アパートの需給バランスが大幅に変化し、地価や賃料の下降、供給過多による空室率の増加の強い要因になり、不動産投資の大きな損失を生む可能性を高めてしまいます。
不動産投資を考えている地域の情報収集はできる範囲で綿密に行ない、「大学・企業の立地」「街の人気」などから割り出される従来の業者の需給予測を参考にしつつ、生産緑地が地域内にどれだけあるのか、あるいは生産緑地が無い地域なのか、ということにもアンテナを広げ、リスクの少ない不動産投資を計画していきましょう。
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